外貨調達に使われるクロスカレンシースワップとは?
今回はクロスカレンシースワップというものを見ていきたいと思います。クロスカレンシースワップ(通貨スワップとも呼ばれています)の詳しい定義は後ほどお話をしますが、基本的には外貨を調達する手段のデリバティブの1つとお考えいただければいいかと思います。
(デリバティブについてより深く知りたい方は以下の記事もどうぞ)
これはあまり意識はされていないかもしれませんが、ニュースでもよく出てきます。例えば日経新聞に「ドル調達コスト低下 ドル不足緩和、ゆがみ解消へ :日本経済新聞」というニュースがありますが、これもこのCross currency swapのことです。
こういったニュースをより良く理解するために、どういった取引なのか見ていきたいと思います。
クロスカレンシースワップとは
クロスカレンシースワップとは金利スワップというデリバティブの一種で異なる通貨の交換(スワップ)を意味しております。通常の金利スワップは固定金利と変動金利を交換するのですが、このクロスカレンシースワップは異なる通貨の変動金利を交換します。
例えばドルと円を交換する場合、3か月おきに、ドルの3か月LIBORを支払いドルを調達し、逆に円の3か月LIBORを受け取り円を貸し出すといったオペレーションを行います。そうすることでこちらは円を提供し、逆にドルを受け取るといった形になります。
外貨の調達コストとは
ここで注意点があります。それはドルと円の元本に金利をそのまま乗じただけでは交換ができないという点です。理由といたしましては、通貨が異なるため、ドルの3か月LIBORと円の3か月LIBORは全くの同じ(イコール)という形にはなりません。そのためスプレッドというコストが生まれてきます。
式で書くと以下のようになります
USD 3M LIBOR(ドルの3か月LIBOR)= JPY 3M LIBOR(円の3か月LIBOR)±スプレッド
理屈上ではこのようになるのですが、一般的には円のLIBORからスプレッドを差し引いて取引がされます。
これを加味して式をもう一度書きます。
ドルの3か月LIBOR= 円の3か月LIBOR ー スプレッド
この「ー スプレッド」を左辺に移します。
そうするとこのようになります。
ドルの3か月LIBOR + スプレッド = 円の3か月LIBOR
つまりドルの金利にコストを上乗せして、ドルを調達する。つまりはこのスプレッドという部分がドルの調達コストにあたるわけです。
実際の通貨の交換はどう行う?
では実際にドルと円を交換する時に、どのように交換をするのでしょう。上の例では3M LIBORを使用し、3か月おきに通貨の交換を行う取引を締結しています。その際、スプレッドを25bp(0.25%)としましょう。
まず3か月ごとに、Fixing(フィクシング)ということが起きます。これは3か月おきにドルと円のそれぞれの3か月LIBORを見に行って金利を確認するということです。この時、ドルの3か月LIBORが3%、円の3か月LIBORが1%だとします(あくまでも分かりやすくするために大きい数字を選んでます)。
ここで先ほどの式を思い出してください。
ドルの3か月LIBOR= 円の3か月LIBOR ー スプレッド
つまりドルは元本に3%を掛けて、日数調整を行い、ドルの調達額を計算します。一方で円の方は、元本に1%ー0.25%の0.75%を使用し、キャッシュフローを計算します。
当然のことながら毎回のキャッシュフローでは上の式は成立しません。あくまでも初回の取引時にお互いが納得できる水準として、取引を締結しているだけですので、それ以降この等号が成り立つことは基本的にはありません。
このように一般的に金利スワップは固定金利と変動金利の交換なのですが、異なる通貨を交換する取引も行います。クロスカレンシースワップは海外に投資を行う際の資金調達の手段の1つとして非常によく利用されます。また最初に提示しましたようにニュースでもたびたびクローズアップされ、マーケットの解説時に聞くことが多いかと思います。ぜひ理解を深めていただければ幸いです。
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