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LCH / CME / JSCC 金利スワップ市場に出てきたクリアリングハウス間のスプレッド

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今となっては業界の常識になりましたが、金利スワップの世界ではCCPと呼ばれるクリアリングハウス間でスプレッドが発生してしまっています。。例えば、JSCCでは金利が0.1%だったとしても、LCHでは0.12%になっていたります。今回は、こういったクリアリングハウス間でのスプレッド(ベーシスと呼ばれたりもします)について、見ていきたいと思います。

 

 

クリアーするとはどういうことか

まずそもそも金利スワップをクリアーさせるということがどういうことか考えてみたいと思います。一言で言うと、株で言う取引所のようなものに間に入ってもらい、カウンターパーティーリスクを減らそうという試みであります。

 

金利スワップはOTC取引(店頭取引)となるため、金融機関Aと金融機関Bが取引をするとお互いが直接取引を行っていました(こういった取引をバイラテラル取引と言います)。しかしリーマンショックの破綻に見られるように、過去のようにここの金融機関は潰れないだろうという考え方はもうできなくなってきました。

 

実際、マーケットではCVAといった相手のカウンターパーティリスクをpriceに反映させようという動きも出てきました。そこで、それぞれの金融機関でお金を出し合って運営しているクリアリングハウスに間に入ってもらえば、このカウンターパーティリスクというものを最小限にすることができるのではという考え方になりました。

 

補足ですが、もしCVAにご興味のある方がいらっしゃいましたら、以下の本はとても面白く読んでいただけるかと思います。

 

実際どういったクリアリングハウスがあるか

主なクリアリングハウスは主に3つです。1つ目が日本のJSCC、2つ目がロンドンのLCH、3つ目がアメリカのCMEです。この主要3大CCPで金利スワップのクリアリングというものが行われております。

 

CCP間のスプレッドが発生する要因

ここまでで金利スワップをクリアーさせるということでリスクを減らそうという動きや、そもそもどういったクリアリングハウスがあるのかを見てきました。 実は、現在それぞれのクリアリングハウスでのレートが異なってきてしまう現象が起きています。

 

(LCHとJSCCのレートの違いについて調べたところ、こちらのページがとてもよくまとまっていたので、紹介だけいたします)

 

www.clarusft.com

 

ではどうしてこのようなスプレッド(ベーシス)が生じてしまうのでしょうか。それはいくつか理由はありますが、大きな理由の1つに持ち込まれる取引の質が異なるということがあります。まずはJSCCから見てみたいと思います。JSCCは日本のクリアリングハウスになります。そうすると必然的に取引参加者は日本の金融機関になります。

 

日本の金融機関はリスクを好まないため、固定金利の受けを選好する傾向があります。いわゆる債券の買いと同じ経済状況になります。こうすることで変動金利の受けといった不確実なものではなく、将来的なキャッシュフローを確定することができます。

 

固定金利の受けに対する需要が高いということは、スワップレートが低下する要因になります。固定金利をもらいたいという人が多いということは、その固定金利を下げても欲しいという人が多いということになりますので、金利の低下につながります。

 

一方で欧米では日本ほど取引が一方向に傾くことは、あまりありません。欧米では特に低金利が続いている時代では金利先高観への期待も強く、固定金利払い・変動金利受けといったポジションも取られる傾向があります。そうすると、スワップレートは上がりやすくなります。このように投資家の需要が日本と欧米では異なることもあり、使われる金利で乖離が目立つようになってきました。

 

LCH-JSCCベーシスのポートフォリオへの影響は?

もし日本にメインの拠点がある円のトレーダーのポートフォリオが全てJSCCのカーブで時価評価を行っていた場合、スプレッドを加味することで、思わぬ損失が発生することがあります。

 

以下は先ほどのウェブサイトに掲載がされておりましたブルームバーグの画面サンプルになります。

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このように各テナー毎にスプレッドが表示されています。これの調整ですが、過去記事の「金利のトレーダーは何を見ている。デルタでのポジション管理とヘッジについて。」でもご紹介させていただいた通り、スワップトレーダーは各テナーごとのカーブに対する感応度で管理を行っています。

 

したがいまして、例えば10Yの所のリスク(カーブが1bp動いた時のインパクト)が+10万円だった場合、もしCCP間のスプレッドが2bp(0.02%)だとすると、その時点で評価額は+20万円になります。

 

これはうまく行った例ですが、トレーダーは金利が下がると思っていれば、マイナス方向へのポジション(例えば-10万円 = 金利が1bp下がると10万円儲かる)といったポジションを持っているケースもあり、そうなるとこのスプレッドはネガティブに働きます。

 

各テナーごとにスプレッドが異なっておりますので、自分の持っているポートフォリオのデルタリスクにそれぞれのスプレッドを掛け合わせることで、インパクトを考えることができます。

 

まとめ

以前からCCP間のスプレッドというのは、考えられてはいましたが、これが顕著になったのはここ数年の話です。そこにうまく対応ができたか否かでそのトレーダー並びに金融機関の損益に大きなインパクトが出てきたことでしょう。

 

金融業界では常に新しいトレンドが出てきています。そこがビジネスチャンスでもあり、そこに対応できたトレーダーが結果的には生き残っていくことになります。今までには見られなかった現象というのも、散見されるようになってきていますので、情報を集め、マーケットの注目点をいち早く見つけていくことが大事になってきています。

 

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デリバティブ・金融工学について学ばれたい方がぜひ読んでおきたい本を10冊選びました。どれも良書ですので、ぜひ読んでみてください!

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スワップションの業界では一般的になったSABRモデル。日本語で紹介された文献は非常に少ない中、日本語で書かれた書籍があります。また海外で読まれているSABRモデルの参考書籍も紹介しております。非常におすすめでした。

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金利スワップの仲間である通貨スワップ。これがどういった取引であるか紹介をさせていただいています。外貨の調達手段として非常によく使われています。

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プロフィール

当ブログにお越しいただき、ありがとうございます。

 

このブログのご案内を少しさせていただきたいと思います。

 

 

自己紹介

名前はjunshi(ジュンシ)と言います。外資系の金融機関ばかりをうろうろすること〇十年、時間が経つのは早いと感じております。

 

専門はデリバティブ、ビジネスマネージメント、経済分析となります。

 

埼玉の住宅街でひっそりと暮らしております。

 

外資系の金融機関をいろいろまわっているというと、「イケイケのサラリーマン」「エリート」みたいに思われることがありますが、これが残念ながら全くなのです。。。

 

毎日丸の内や銀座、六本木、麻布十番、恵比寿でパーチー(パーティー)をやっているイケイケな生活とは全く縁もなく、堅実をモットーに生活をしています。

 

当ブログの趣旨

私自身、外資系の金融機関に入るまで、イケイケサラリーマンの集まりで自分とは縁がないところだと思っていました。しかしこれが入ってみると意外と普通なところなのです。

 

正直この背景としては、あまり正確な情報が流れているところがないというのが大きな理由だと思います。とは言え、外資系の金融機関に入るにはそれなりのテクニックと知識のようなものは必要になります。

 

このブログではうやったら外資系企業に入れるのか、入って仕事をしていくのか、あまり表に出てこない金融のコンセプトを紹介できればと思っております。

 

またその中で自分が読んで、「良かった!」と思える書籍を紹介していきたいと思っています。

 

本当はそれだけでブログを運営していきたいのですが、ネタ切れもしそうなので、気になったほかの話題や雑談も入れて、末永く自分のペースで更新をしていきたいと思っています。

 

対象となる読者の方

「どういった方を対象に書いたらいいか」また「どんな人に読んでいただきたいか」ということを考えたときに以下のようなプロファイルが思いつきました。

 

もちろんこれはいくつかの例で、必ずしもこれに合わなくてもいいのですが、何となくこういったことをイメージしてブログを書いています。

  • 金融に興味がある方
  • 金融機関で働いている方
  • 金融機関で働きたい方(学生さんを含む)
  • 外資系金融機関(外資系企業)に興味がある方
  • 資産運用、投資を行っている方
  • 金融以外の話をしても怒らない方
  • 雑談をおおらかな心で読んでいただける方

本当にマイペースでの更新となります。また、誤字脱字には最大限気を付けておりますが、文章を書くのが苦手なこともあり、読みづらい部分もあるかと思います。

 

しかしながら、あまり他では見つけられないような情報を発信していきたいと思います。どうぞよろしくお願い致します!

 

 

 

GPIFのページって、個人投資家のバイブルとして見れるよね

今回はGPIFのページを見ていて、改めてよくできているなと思ったので、書いてみたいと思います。

 

GPIFとは皆さんご存知の通り、「年金積立金管理運用独立行政法人」(Government Pension Investment Fundの略)で、我々の年金を運用してくれている機関です。我々は年金を積み立てており、それを運用してくれている形になります。これって何となく我々が行う投資の積み立てに似ていると感じるかと思います。

 

では実際にどのような運用をしているのか見ていきたいと思います。

 

 

基本のポートフォリオ

まずGPIFのHPより「基本ポートフォリオ | 年金積立金管理運用独立行政法人」を見るてみましょう。運用資産の振り分け(アロケーション)を見ることができます。

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どうですかね。株式資産の比率を増やしたと言われていますが、債券への投資も十分狙っているので、そこまでリスクの高いポートフォリオにはないように見えます。

 

実際の数値目標としては、運用利回りが3.2%。これは物価上昇分を加味したうえで、実質1.1%の利回りを目指しているとのことです。

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出典:基本ポートフォリオの考え方 | 年金積立金管理運用独立行政法人 

 

実際の運用成績はどうか。

2017年8月に発表された「2001年以降の累積収益」は年率換算で+3.07%、金額ベースで言うと+58.5兆円となったそうです。

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 今回のこの運用結果に関して高橋理事長は以下のようにコメントをしています。

2017(平成29)年度第1四半期(4月~6月)は、内外の堅調な経済指標、良好な企業業績により、世界的な株高基調が継続しました。また、日銀の金融緩和が継続される中で、FRB(米連邦準備理事会)の政策金利引き上げやECB(欧州中央銀行)等の金融政策正常化観測から円安基調となりました。

 

国内外の好調な業績や、為替相場が円安に動いたこともこの運用成績に寄与したようです。GPIFは動画でも運用成績の公開も行っていますので、ご興味がある方は一度見てみるのが良いかと思います。

 


2017(平成29)年度第1四半期運用状況の公表(説明)

 

個人投資家として得られる部分

では我々個人投資家としては、どのような所を得られるでしょうか。まず第一にGPIFという大きな機関であっても「アロケーションをちゃんと決めて運用しているんだな」ということ。これは結局はポートフォリオ理論の基本的なところになるのですが、分散投資を行うことでリスクを最小限にし、そのなかでリターンを最大化していくということにつながっていきます。

 

やはり一時的な下げは市場ですから起こりえるのですが、その中でも株式をベースにしながら債券でリスクを調整し、ポートフォリオを管理していくというのは、機関投資家だけではなく、我々も学ぶことができるのではないでしょうか。

 

第二に、そもそも何にどう投資していいか分からなければ、このGPIFのアロケーションを参考にしてみるのもよいのではないでしょうか。上のグラフにもあるように、概ね株式・債券で50%ずつ程度の資産分配をベースに行っているようです。

 

分散投資の意義 | 年金積立金管理運用独立行政法人」は株式に投資する意義、債券に投資する意義といったことが紹介されています。内容としては基本的なことかもしれませんが、初めて資産運用を開始される方にとっては、非常に有益な情報かと思います。

 

もし我々も何に投資してポートフォリオを組んだらいいのか、今の資産分配で問題ないのかというところで、道筋を求めてみたくなったら、この巨大運用期間も基本に沿った運用を行っているというところを見てみるのも良いのではないだろうか。

 

最後に「投資原則に基づく長期的な運用」です。皆さんは運用される際に投資原則といったものをお持ちですか。正直これは何でもいいと思います。例えば、「毎月〇万円は必ず投資に回す」ですとか「一度決めたアロケーションはすぐに変えない」ですとかそういったものでいいかと思います。

 

投資原則・行動規範等 | 年金積立金管理運用独立行政法人」では、GPIFにて設定がされている原則が紹介されています。

基本ポートフォリオを策定し、資産全体、各資産クラス、各運用受託機関等のそれぞれの段階でリスク管理を行うとともに、パッシブ運用とアクティブ運用を併用し、資産クラスごとにベンチマーク収益率(市場平均収益率)を確保しつつ、収益を生み出す投資機会の発掘に努める。

 

リスク管理やベンチマーク収益の確保といったところは我々にとっても身近な部分ではないでしょうか。

 

まとめ

このようにGPIFという我々の年金を運用している一大機関であっても我々の運用と似た部分はあるというところが見えるかと思います。運用は一人で行っていくことが多いです。運用がうまく行かないと、方向性を見失ってしまうことがあるかもしれません。そんなときにこの年金運用の方針をバイブルとして見てみるのはいかがでしょうか。

バボラのRPM Blast Roughはめちゃくちゃ良いガットだった件 評価/インプレ/感想

今回はテニスの話です。ガットを新しいものにしてみましたので、それのインプレを行ってみたいと思います。そのガットはBabolat社のRPMブラストラフというガットです!
 
【使用ラケット】
Head ユーテック(YouTek) グラフィンXT(Graphene XT)
ラジカル・ミッドプラス(RADICAL MP)
 
【使用ガット】 
RPM ブラストラフ 1.25
 
【テンション】 
45ポンド
 

 

RPMブラストラフとはどんなストリングか?

RPMブラストラフのセールスポイントはそもそもどんなところになるのでしょう。 
凸凹感のあるラフな表面処理の採用によりスムーズな動きを実現
スピン性能を限界まで高め、ボールへの食いつきも向上
 張り上りはこのような感じです。
 
babolat RPM blast rough 1.JPG
 
babolat RPM blast rough 2.JPG
 
画像では少しわかりにくいかもしれませんが、何となく表面はでこぼこした作りにたしかになっています。では実際の打ち心地をまとめてみます。
 

実際に使ってみた感想

まず一番驚いたのは、その柔らかさです。ポリエステルは一般的に硬い印象を受けることが多いのですが、このガットはまず柔らかさ、手への優しさを感じました。
 
次に驚いたのはホールド感です。皆さん、ホールド感は好きでしょうか。私はホールド感のある感触が一番重視しています。一旦、手(ラケット)で受け止めて、そこから飛び出してくれるような印象です。そのため、回転はもちろんフラット系にもボールを飛ばすことができます。しっかり振り切ることでスピンもスライスもよくかかっており、バウンドしてからの伸びというのを売っている側からでも実感していただけるのではないでしょうか。とくにスイングスピードを速くして、ハードヒットしたときのホールド感は非常に高かったです。
 
凸凹の作りを売りにしてますが、カシャっとスピンをかけるというよりは、厚く当てて重いスピンをかけていくようなスタイルにベストマッチするかと思います。飛びもポリエステルとは思えないほどしっかり飛んでくれます。個人的にはやはり飛びとスピン性能を兼ね備えた道具というのが一番求めている部分であり、しっかり飛んでくれた部分をスピンで抑えていくイメージになるかと思います。
 
以下はテニスショップlafino様の実際のインプレ動画ですが、非常に参考になります。
 

まとめ

評価を数値化するとこのようなイメージになります。
飛び    4/5点
スピン   5/5点
ホールド感 5/5点
振動    4.5/5点
 
使用者のイメージとしては、中級から上級の方でスピンをかけて攻めていきたい人向けかと思います。ぜひお試しください!!!
 

 

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金利のトレーダーは何を見ている?デルタでのポジション管理とヘッジについて。

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今回は金利スワップでよく聞くデルタという部分です。金利スワップのトレーダーも為替のトレーダーなどと同じで基本的には、顧客と取引を行った場合、逆向きの取引をブローカーと行いポジションをクローズ(利益確定あるいはロスカット)しようとします。そういった収益の確保の仕方もあるのですが、今回は金利商品をポートフォリオとして考えたときに、どのようにして損益が出るのか考えてみたいと思います。
 

スワップトレーダーはカーブへの感応度で考えている

オプションの時には、オプションが行使される確率というお話をさせていただきましたが、金利スワップの場合デルタはカーブが1bp(bpはベーシスポイントで、1/100%を指します)動いた時の、時価の変化を表しています。
 
例えばあるスワップトレーダーは以下のようなリスクを持っているとします。
(便宜上非常にシンプルにしています)
 
1Y +1000円
3Y -3000円
5Y +4000円
10Y +10000円
 
上の数字はカーブが1bp動いたときに自分のポートフォリオの時価がどのくらい動くかということです。合計すると+12000円です。
 
したがいまして、カーブが1bp上がってくれれば、この人は12,000円儲かることになるのです。逆にカーブが1bp下がってしまえば、12,000円の損をすることを意味しています。
 

カーブの動きが損益に直結する

実際のマーケットを見ると、カーブが全体で同じ方向に動くということはありません。例えば3Yは上がったけど、10Yは下がったということはよくあります。そのため、このリスク(デルタ)をどういう風に組むのかがトレーダーとしての腕の見せ所になってきます。
 
一つの考え方は、近い年限のものは同じ方向に動くという考え方を使うことです。どういうことかというと、7Y、8Y、9Yのところは似た動きをしがちです。したがいまして、例えば以下のようにポジションを組むとリスクを最小限に抑えることができます。
 
7Y +5000円
8Y -10000円
9Y +5000円
 
実際イールドカーブは生き物のようです。フラットになったりスティープになったり、いろいろな動きをします。その中でどういったポジションをもってマーケットに立ち向かうのか、トレーダーは常に考えを巡らせています。
 

債券や債券先物も組み合わせてカーブの動きに対するヘッジを行う

ここまではスワップトレーダーがどのようにリスクというものをとらえているかという点に焦点を当ててきました。デルタリスクを見ることで、カーブの動きに対して自分のポートフォリオの損益を考えています。更に近いところの年限でデルタリスクを逆向きにすることで、リスクを下げることも選択肢の一つだと考えられます。
 
ここからはスワップと債券の両方でポートフォリオを考えていきたいと思います。債券は価格が上がると利回りが下がるという特性を持っています。つまり債券を買い持ち(ロングポジション)していれば、金利が下がるほど利益が出ることになります。
 
一方で債券を売り持ち(ショートポジション)している場合、債券価格が下がるほど(また金利が上がるほど)利益がでるポジションとなります。これを考えると金利スワップと債券を取引することでリスクを抑えることができるようになります。
 
具体例を挙げてみます。例えば10Yのところのデルタリスクが+100万円のポジションを持っているとします。これは言い換えると10Yの所の金利が1bp上がると100万円儲かるものの、1bp下がってしまったら100万円損が出てしまうということになります。このデルタリスクを減らしたいと考えた場合、債券でヘッジするという選択肢があります。つまりデルタリスクを減らしたい分だけ債券を購入するのです。債券を購入すれば、金利が下がるほど儲かるポジションになるので、先ほどの金利が1bp下がれば100万円損を出すというポジションのリスクを減らすことができます。
 
もちろん債券先物も債券と同様の特性があるため、金利リスクのヘッジには使うことができます。債券先物ですと取引所に上場しているため、価格の透明性も高く、また流動性もあるため非常によく利用がされます。
 

証券会社のトレーダーは常に見られている

証券会社のトレーダーは常に各部署から見られています。それはトレーダーが無茶なポジションを持つと、会社全体へのインパクトが大きいような損を出す可能性があるからです。そういう意味では、一般の投資家よりも損を出さないという点に関しては徹底がされています。
 
証券会社のフロントの取引は、マーケットリスクやクレジットリスク、コンプライアンスやオペレーション部に絶えずモニターがされ、何か妙な取引があるとシニアマネージメントに情報が吸い上げられるような体制をとっています。金融の第一線のプロがそこまでリスクに敏感な事実を考えると、我々個人投資家も損を出さないということがいかに大事かということが分かるかと思います。
 

終わりに

今回はスワップトレーダーの観点から、金利リスク(デルタリスク)にどのように向かっているかまとめてみました。金利商品を扱っているトレーダーは常にカーブの動きに対する損益という観点から厳しくリスクが管理され、その中で収益を生み出そうとしています。またリスクに対して敏感になるという点に関しては、我々個人投資家も見習わないといけない点なのかもしれません。
 
大きな損を出してしまうと金融機関の人であればその組織の存続に関わる、また一般の方であれば家庭に大きな影響を出してしまう恐れがります。常にリスクというものに気を配り、いかにしてロスを出さないかが最終的に生き残るための重大な考え方なのかもしれません。
 
▼以下は関連記事です。
FXリスク(為替リスク)のヘッジに一般的に利用されている為替フォワードについてまとめてみました。

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外資系の金融機関で働いてみたくなったら、こちらの記事をご覧ください。

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スワップションの決済にはPhysicalとCashがある

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 過去に一度SABRモデルに関して触れたことがあるのですが、スワップション(Swaption)の決済についてお話ししたいと思います。
 
スワップションの決済は主に2つです。
 
1. Physical Settle
2. Cash Settle
 
では実際にどういったものなのかご紹介します。スワップションの満期が来たとします。このスワップションはITM(In the money)なので、価値を持ったものとなり、行使がされます。
 

Physical Settleはスワップを始める取引

もしPhysical Settleであれば、元々契約をしていたスワップを始めることになります。例えば、3か月後スタートの10年のレシーバースワップションであれば、満期になり、ITMだった場合、その時点から10年の固定金利受けのスワップションが始まります。
 
おそらくこれが一番ベーシックなもので、しっくりくるのではないでしょうか。
 

Cash Settleはキャッシュ(お金)のやり取り

一方、Cash Settleの場合は、満期の時のスワップの時価の金額(キャッシュ)をやりとりします。そのため、実際にスワップは締結がされません。では今度は実際に取引をしているブローカーから見て、どちらの決済方法が魅力的でしょうか。
 
一般的には、Cash Settleの方になります。理由としてはSwapを組む必要がないからです。そのスワップ分の時価を今受け取ることができるので、各種リスクに晒されずにすみます。
 
日本ではphysicalのケースの方が多いかと思いますが、欧州ではcash settleという方法はかなり一般的に使われています。日本ではCash settleの取引で満期を迎えた場合、
TSR(Tokyo Swap Reference rate)を使い時価評価をし、デルタヘッジのスワップを入れるケースが主流です。
 
スワップでいうデルタはまた別途お話ししたいと思います。

NISA口座で買っておきたいおすすめ銘柄 - 利回り5%超のETF

こんにちは。
 
あまり個別株の話はしないのですが、ETFということで少し個別銘柄の話をしてみたいと思います。今回は証券コード1566の「上場インデックスファンド新興国債券」になります。
  

そもそもどんな銘柄か

こちらは円換算したブルームバーグ・バークレイズ自国通貨建て新興市場国債・10%国キャップ・インデックスの変動率に一致することを目指したETFです。つまり新興国の債券に幅広く投資する効果のある商品になります。以下は目論見書に記載のされている2017年7月末時点での主な保有銘柄と投資地域となります。
 
<保有銘柄>
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<投資地域>
1566 country.JPG
 
もちろん新興国の銘柄ですのである程度リスクは高くなりますが、1か国に集中投資されているわけではなく分散投資もされていますので、リスクが極端に高いということはないでしょう。(もちろんその人のリスク許容度にもよります)。また一般的に新興国への投資というのはコストが高くなりがちですが、こちらの運用管理費は「純資産総額に対し年率0.486%(税抜0.45%)程度」と比較的抑えられてはいます。
 
1566 cost.JPG
 

非常に魅力的な高い分配金

こちらの銘柄の大きな魅力の一つは高い分配金利回りと言えます。運用会社さんである日興アセットマネジメントのHPでは7月末時点の分配金利回りとして5.80%と紹介がされています。
 
1566 yield.JPG
 
また以下は分配金額の推移です。若干のずれはございますが、2か月に1回ほど概ね500円強の分配金が支払われています。例えば直近のところですと、10口購入していれば528,700円の投資で5,020円ほどの分配金が受け取れることになります。
 
非常に魅力的であることがお分かりいただけるかと思います(1年換算すると30000円以上になります)。NISAは分配金も非課税です。もし通常口座であれば4,000円程度しか分配金を受け取れないことになってしまいます。この1000円は非常に大きいでしょう。
 
この分配金を使って外食をするのもよし、金融資産に投資するのもよしでしょう。
 
1566 historical.JPG
 

あくまでも新興国債券ということを忘れずに

ただ念のためですが、あくまでも新興国債券への投資となりますので、リーマンショックの時のように流動性が低下したときやリスク志向が後退したときにはダメージもあります。
 
また円建てで考えているため、円高への弱さもあるでしょう。しかしながら、あくまでも資産運用の一つの選択肢として使うには非常に面白い銘柄かと思います。(投資は自己責任でお願いいたします)
 

オプションでのデルタリスクをヘッジしてみよう

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過去ブログ「オプションのデルタの復習」で、オプションのデルタリスクについて、
少し話をさせていただきました。そこのブログではデルタを以下のように
定義させていただきました。
 
  1. 原資産の変動に対してオプションの価値がどの程度動くか
  2. この満期時点でオプションが行使される確率がデルタ
 
結局のところ、この原資産が動くことによってオプションは価値を持ったり持たなかったりするわけですので、この原資産の動きに対するオプションの価値の変動をなくそうというモチベーションがトレーダーには出てきます。
 

デルタリスクをヘッジするデルタヘッジ

ではここで行使価格10000円のコールオプションをショート(売り建て)してみたと考えます。オプションはショートするとプレミアムをもらうことができる一方で、もし原資産の価格が上昇していけば、自分の損失は無限大になっていきます。
 
ここではプレミアムの影響をなしで考えてみたいのですが、つまり原資産が10000円を超えれば超えるほど自分の損失が拡大していきます。
 
ここからも分かるようにこのケースでは原資産の商品をロング(買い建て)していれば、オプションで損する分を原資産の儲けでヘッジすることができます。
 

デルタヘッジの実際

ではどのくらい原資産の商品を買えばいいか?それはデルタがオプションが行使される確率という考え方から行っていきます。
 
現在のその原資産の価格が10000円の場合、行使価格も10000円ですとATM(At the money)となる。つまりデルタは50%ということになります。
 
もしこのコールオプションを100万円分ショートしていた場合、50万円分ロングのポジションを持てばデルタがヘッジされる(フルヘッジするかパーシャルでヘッジするかはトレーダーの戦略による)。
 
以下の表は自分の持っているオプションに対してデルタヘッジを行う場合、原資産をどうすればよいかまとめてみました。
 
  ロング ショート
コールオプション ショート ロング
プットオプション ロング ショート
 
つまりオプションのデルタ分を上の表のアクションでヘッジすれば、デルタリスクをヘッジすることができる。
 

まとめ

繰り返しになりますが、このようなオプションリスク(グリークスとも呼ばれます)はどのようにするのが正解かというわけではなくて、自分の考えている相場観や「どの部分でリスクをとりたいか」という考え方によって決まってきます。
 
そのシナリオ通りに数字を近づけていくことがこのオプションのリスクをヘッジするという意味合いになってきます。
 
▼以下は関連記事です。
デリバティブのことを深く学びたい方はまずこの本を!おすすめの書籍を選びました。

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オプションの計算のベースとなるブラックモデル。その公式をなるべく数式を使わずに解説いたしました。

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高評価!濃厚エキス 野草酵素萬葉を実際に飲んだ感想

今回は最近見つけた健康ドリンクに関して少しご紹介をしたいと思います。

 

当方は30代なのですが、30歳を過ぎる前は「30歳を超えると20代までのようには身体が機能しなくなる」なるという言葉をあまり身に染みて感じていませんでした。しかし30歳を過ぎたあたりから、健康診断で今までは出たことなかった注意項目が少しずつ出てくるようになってきました。
 

30代の健康に対する意識

マクロミル様のレポートによると以下のような結果が出ています。
 
81%が自分の健康に関心を持つ。健康の維持・向上に取り組んでいる人は52%で、30代が最低
9割もの人が身体に何らかの不調を抱えている
 
30代は忙しいといったこともあり、健康維持への意識ということが現実的には難しいのかもしれませんが、身体は正直で皆さん何かしらの不調というのはあるようです。
 

健康維持における野草酵素

この野草酵素ドリンクは、80種類もの野草や果物、海藻から作られています。その原材料の中には、クコの実やアガリクス、ナツメといった漢方に使われるものもあり、それらから濃厚なエキスを抽出し、1年以上かけて自然発酵して作られています。
 
その自然の恵みを効率よく吸収することで、健康的な生活を送ることができます。
 
(原材料は、販売元の「まんよう販売店様のHP」で見ることができます)
 

野草酵素 萬葉の特に優れた点

  1. 添加物や余計な水分など無駄なものが入っていない濃縮原液である
  2. それでいて飲みやすいので続けられる
  3. 長い酵素研究によって安全性ならびに健康への追及が続けられている
現在の酵素ドリンクは添加物などで保存期間を延ばそうとしたり、水分で水増ししているものもあるようです。しかしこれは余計なものを入れていない、先ほど述べた80種類の原材料のエキスのみであります。
 
また続けるうえで味も大事かと思いますが、非常に飲みやすいです。
 
私自身、他社さんが出している商品が口には合わなかったのですが、こちらは甘くおいしくいただけます(黒砂糖が入っているからかもしれません)。
 
更にこちらは40年以上にわたって酵素研究をされている越後薬草さんが「最上級の酵素をつくること」をテーマに作っておられます。
 
この商品は日本成人病予防協会さんの推奨品ともなっており、品質は非常に良さそうです。
 

実際の商品はどのようなものか

実際の商品の様子です。
 
yasou kouso manyou 1.JPG
 
原液をカップに出してみます。一回25mlの原液です。
色が濃く、エキスが凝縮されているような気がしてきます。
 
yasou kouso manyou 2.JPG
 
私はソーダ割が好きです。2-3倍の炭酸水でこの原液を割ります。
 
yasou kouso manyou 3.JPG
 
本当に飲みやすいです。若干コーラに近からず、遠からずのような味もします。
 
ぜひ試してみてください!!
 
 
 

SABRモデルを日本語で紹介している数少ない書籍と関連英文書籍

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今回ご紹介するのは「トレーダーは知っている-オプション取引で損をしない「法則」」です。こちらの書籍は、元トレーダーの方が書いた本であるということで基本的な内容から実務的な内容まで幅広く提示がされています。
 
第1章では、為替マーケット、先物マーケット、金利スワップマーケットの基本から始まり、その後はボラティリティの説明といった基礎知識を踏まえ、オプションポートフォリオの管理という実践的な内容まで踏み込んでいます。
 
非常に内容としては幅広いのですが、今回はSABRモデルを紹介している数少ない日本語での書籍という切り口から、当書籍を取り上げさせていただきたいと思います。
 

なぜこの本を手に取ったか

金利デリバティブに携わる仕事をしているため、金利オプション(スワップション / Swaption)のプライシングモデルとして一般的なSABRモデル(セイバーモデル)を知りたいと思ったため、この本を手に取りました。英語ではより深く説明がしてある本もあるのですが、日本語で勉強をしたいと思っていたところにこちらの本がありました。
 
尚、当記事の最後で参考として英語版でのおすすめのSABR Modelの書籍もご紹介したいと思います。
 

感想

SABRモデルの重要な所はどこかと言われると、もちろん計算方法の部分になるかとは思いますが、その前の段階として4つのパラメーターが何を指しているのかを理解するところにあります。
 
SABRモデルでの4つのパラメーターとは、アルファ・ベータ・ロー・ニューとなります。当書籍では実務的な計算方法や、昨今のマーケットで観測されているマイナス金利への対処法という点はあまり載っていませんが、そもそもSABRモデルとは何かというところを非常に分かりやすく紹介しております。
 
ちなみにざっくりそのパラメーターが何を指しているかというと以下のようになります。
  • アルファーはボラティリティ
  • ベータはスマイル(ベータが1であればログノーマルモデル、0(ゼロ)であればノーマルモデル)
  • ローは原資産の動きとボラティリティの相関
  • ニューはボラティリティのボラティリティ
 
著者は円金利スワップションの他にコモディティも取引をされていた経験もあるようで、コモディティの話なども出てきますが、もしご興味がなければ読み流しても問題ないかと思います。
 
またSABRモデルは所謂、個人投資家の方が通常使うモデルではないので、そういった方にはお勧めはできません。(ただこの書籍の最初に書いてあるオプションのシミュレーション等は読み物として面白いかとは思います。
 
結論としてはSABRモデルについて説明された日本語の書籍は他に知らないので、そこの部分だけでもこちらの書籍の存在価値は非常に高いと思います。特にベータを0あるいは1にしたケースでのボラティリティの挙動を直感的に分かりやすく提示してくれていた点は、この書籍を購入してよかったと感じる点の1つでした。
 
ベータは上にも書いたように、ベータが1であればログノーマルモデル、0(ゼロ)であればノーマルモデルとなります。一般的にボラティリティは%で表示されることが多いのですが、その%で表記をするのはログノーマルモデルということになります。一方で、何bp(ベーシスポイント=1/100%)という実数値で表すのが、ノーマルモデルとなります。
 
例えば現在金利が0.1%だとします。ボラティリティが200%だとすると、この10%というのがログノーマルボラティリティであり、0.1%*200%の0.2%、つまりは20bpというのがノーマルボラティリティとなります。
 
そもそもボラティリティで200%というのがあるのかという所ですが、これは金利の世界ではよく見受けられます。世界的な金融緩和で金利水準が低くなったことによって、変動率で見たときに%の値が大きくなってしまうのです。
 
それは10,000円のものが20,000円になるということはなかなか起きにくいと思いますが、0.1%が0.2%になるということはかなり一般的ということは感覚的にも分かりやすいかと思います。そういったことがあるため、特に金利のマーケットでは%表記のボラティリティだけではなくbpという実数値での表記が一般的なのです。
 
でも実際実務的なことで考えると、この%とbpでの表記の中間的な考え方でボラティリティを考えるのが、ちょうど良いという考え方(より現在のマーケットにフィットしている)を持ったトレーダーの方もいます。そういったときに、このSABRモデルを使い、どの程度%寄りの数字にするか(あるいはbp寄りの数字にするか)といったことを決めていくのです。
 
また相関係数もこのモデルでは非常に大きな意味を持っています。株式のマーケットをモニターされている方だとお分かりいただけるかと思いますが、一般的に株式市場では株価が下落するとボラティリティがあがるという逆相関の関係にあります。金利スワップのマーケットではこの金利とボラティリティにどの程度の相関を考慮させるかも決めることができます。
 
またもう一つボラティリティのボラティリティというものがあります。実際ボラティリティをモニターしているのとボラティリティ自体も動いています。例えばリーマンショックのような金融市場に大きな影響が起きるイベントが起きた場合、ボラティリティ自体が高くなります。これがボラティリティのボラティリティが高まる事象と言えます。
 
こういった各種パラメーター(事象)を加味して、オプションの値決めをし、リスクを捕捉しようというモデルがSABRモデルとなります。ただこちらの書籍もSABRモデルの解説は比較的多いものの、それでも15ページ程度に抑えられています。
 
そのため、より深く勉強されたい方は、英語になりますが以下の「SABR and SABR LIBOR Market Models in Practice: With Examples Implemented in Python (Applied Quantitative Finance)」やThe SABR/LIBOR Market Model: Pricing, Calibration and Hedging for Complex Interest-Rate Derivatives」がお勧めです。