オプションで超重要なブラックモデルの計算を、文系の方にも分かりやすくイメージ重視でまとめてみた
今回はブラックモデルに関してです。ブラックモデル(ブラック76モデルとも呼ばれます)とは、ブラックショールズモデルの発展形になるのですが、コンセプト自体は非常に分かりやすく、ブラックショールズモデルの理解の助けにもなるかと思うので、今回はこちらをピックアップしております。
ブラック・ショールズモデルというと、複雑な数学を分からないと理解ができないと思ってしまいがちです。たしかにこの式がどのようにして導かれているのかといったことを考え始めたら、なかなか複雑で数学の知識が必要となってくるでしょう。
ここでは、そういった専門的な内容は他の方にお任せして、若干おおざっぱであってもブラックショールズモデルというものがどのような意味で使われているのか、イメージをお伝えできればと思います。
ブラックショールズモデルとは
そもそもベースとなるブラックショールズモデルは、歴史をさかのぼると1973年にフィッシャー・ブラック氏とマイロン・ショールズ氏がオプションの値段を計算するのに適したモデルという形で発表がされました。
このモデルの画期的なことは計算がそこまで複雑でないということと、ある程度のマーケットの実態を反映したというところで金融業界的には非常に大きな一歩となりました。特に必要な条件として以下の5つだけというのは非常に利便性が高いと言えます。
オプションのプライシングで必要なパラメーター
- 原資産の値段
- 行使価格(ストライクの価格)
- 残存期間
- 金利
- ボラティリティ
今回取り上げるブラックモデルとブラックショールズモデルの違いについては概ね同じではあるのですが、原資産価格の所に先物価格を入れるかスポット価格を入れるかで変わってきます(今回のブラックモデルでは、先物価格を使います)。
ブラックモデルの計算方法
では実際に今回のテーマであるブラックモデルはどのような計算を行っているのでしょうか。「Black model - Wikipedia」にもございますように、以下のような式で計算しています。
理系でないと、ちょっとどきっとしてしまうような式ですが、一つずつ考えてみましょう。まず一番上がコール・オプションの価格を計算する式、二番目がプット・オプションの価格を計算する式になります。行っていることは基本的には同じなので、今回は一番上のコールオプションの式をベースに考えていきます。
まずそれぞれの記号の意味ですが、このようになります。
- F = ある原資産の先物価格
- K = 行使価格(ストライクの価格)
- e^-r*T = 連続複利ベースで現在価値に引き直す(rが金利、Tが期間)
- N(d1) あるいはN(d2) = d1あるいはd2を使って求めた確率
つまり、「満期の時に、ある原資産の価格になっている確率と、行使価格になっている確率の差を現在価値にたもの」を表しています。ではこの確率を出すのに必要なものがd1の式であり、d2の式となります。
ここでσというものが出てきます。σはボラティリティを表しています。ボラティリティとは価格がどれだけ変動するか(動くか)を表したものになります。もちろんボラティリティが高ければそれだけ値動きは激しくなるので、行使価格が少し離れていたとしても到達する可能性は高くオプションの価値は高くなります。一方でボラティリティが低いと値動きはほとんどなくなるので、オプションが価値をもつ確率が低くなるのでオプションの価値は低くなります。つまりオプションの価値はボラティリティで決まると言っても過言ではないのです。オプションがボラティリティを取引する商品といわれる所以はこのあたりにあります。
モデルから逆算されるボラティリティ
オプションのことを勉強するとインプライドボラティリティという表現を聞くことが出てきます。これはブラックショールズから求めだされたボラティリティということになります。
オプションの価格をブラックショールズで求めるときに必要だったパラメーターを思い出してください。
- ある原資産の価格
- 行使価格(ストライクの価格)
- 残存期間
- 金利
- ボラティリティ
この5つでオプションの価格を求めることができます。つまり逆に考えると「原資産の値段」「行使価格(ストライクの価格)」「残存期間」「金利」「オプションの価格」の5つがあれば、それに付随するボラティリティを逆算することができます。このように出されたボラティリティをインプライドボラティリティと呼びます。
オプションのデルタとは
以前「オプションのデルタの復習」という内容をまとめました。この時にこのようなご紹介をさせていただきました。
満期時点でオプションが行使される確率がデルタ
今回の内容をご覧いただきますと、このご紹介の意味が少しクリアーになるかと思います。オプションの価格を計算するときに、オプションが行使される確率から、オプションの値付けを行っています。この確率部分のことをデルタという表現をしています。オプションの行使される確率から、原資産商品をどのくらい取引すればよいのかということを考えていくのがデルタヘッジというオペレーションになります。
まとめ
今回はブラックモデルについて、なるべくイメージ重視でまとめてみました。このブラックモデルは金融を勉強し始めるとまずぶつかる壁の一つです。もちろんしっかり勉強をすることも必要ですが、多くの方に必要なのは、この式の計算方法ではなく、この式が何をやっているのかイメージをつかむことだと思います。
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